<<ひたすら東へ・・・>>
無事、ブエノスアイレス発クアラルンプ−ル行きのMH784便は飛び立ち、ここから20時間ほどの空の旅が始まった。途中、南アフリカ共和国のケ−プタウン、ヨハネスブルクにトランジットするのは嬉しい。ただのトランジットだけど、憧れの大地に降立つことができるのはほんとに嬉しい限りだ。
夕食の機内食をおかわりしたがまだ腹は膨れない。そんな気持ちが伝わったのか隣のおばさんがデザ−トのプリンをくれ、ありがたく戴いた。食後に音楽でも聴こうかとヘッドホンを差し込むと、なんと日本の歌だ。前にこの席に座ったのも日本人かもしれない。しばらく聞いているとなぜか無性に涙が出てきて止まらなかった。いよいよ日本に帰るからだろうか?なぜかは解らなかった。
これから20時間後にはクアラに着き、そこからまた2時間ほどでバンコクだ。ほんとに日本はすぐ目の前だ。
夜中の2時半頃に目が覚め、窓を開けると雲平線から朝日が昇る直前だった。何とも神秘的な瞬間で、機内は灯も消え静まりかえり、聞こえるのは寝息のような静かなエンジン音。すぐに機内灯がつき明るくなったと思うと、日の出だ。この座席の位置からでは完全には見えなかったが、少し見えたのでつい写真を撮ってしまった。
やっと夢にまで見たアフリカの大地に立つことが出来た。と言ってもただのトランジットなので全然大したことではなかったが、やっぱり嬉しい。「いつか、もう一度、来てやる!」と誓った。
アフリカからの飛行機には多くの日本人が乗っていて、どこかのツア−客だけでも20人くらいで、それ以外にもちらほらと日本人を見かけることが出来、いつもと違ったフインキだった。また、ひたすら東に向かって飛んでいるのでどんどんと時間を飛び越しているような不思議な空間にいて、時間の感覚ももうみちゃくちゃだった。
マダガスカル島の上空を越え、眼下にはインド洋が広がっていて、小さな船が白い波を引きずって見える。
初めて見たインド洋、と言っても飛行機からなのでほんとはどうか解らないけどきれいな青だった。
着々と子供の頃から抱き続けた夢が叶っていっているのを実感しながら、インド洋を眺めていた。夢を叶えられる人って言うのはほんとに少ない気がし、そう考えると自分の境遇がいかに恵まれているのかと言うのが解る。ほんとに幸せ者で、これからも自分の夢などやりたいことを実現するまで、多くの嫌なことがあると思うが、何事も大事の前の小事と信じ、頑張って乗り越えていこう、と考えているといつの間にか眠っていた・・・。
長旅の末、とうとうクアラルンプ−ルまで来た。この空港には以前にも来たことがあったので懐かしく、ここではシャワ−が使えることも知っている。早速、シャワ−を浴び、体がサラサラとしていて気持ちが良く、髪の毛なんかはこの9ヶ月の間伸ばしたい放題だったので特に気持ちがよかった。
バンコクまで2時間の旅だけど、ここ1日半の間ほとんどまともに寝ていないので、いつ離陸したのかも分からない。時間感覚が狂い、とにかく今はひたすら眠い・・・。
バンコク空港に着陸するとき、まだ着陸もしていないのでもちろん飛行機の扉が開いていないにも関わらず、あの懐かしいタイ独特の臭いを感じた。飛行機の都合上、ここに1泊しないといけない。ちょうど1時間の差で乗り継ぎが上手くいかないということらしい。
こちらとしては懐かしのタイで1泊出来るので嬉しかったので問題はなく、今晩は市内の安宿にでも泊まろうと早速市内に行こうと思い、外へ出た。
自動ドアの扉が開き足を一歩踏み出すともうそれ以上前には進めずすぐに空港内に引き返した。どうも空港内は完全冷房のようで、扉越しには判らなかったが外は暑く、ムッとした熱気に包まれていた。懐かしの街へ行くつもりだったがそんな気は一気に失せてしまい、もうどうでもよくなった。このまま空港で一晩過ごそう!そうすれば汗もかかないしシャワ−も浴びる必要もなく、宿に泊まる必要もない。おまけに明日の出発が朝の9時だったので、バンコクの渋滞はひどいということで有名で飛行機に乗り遅れるかもしれない、と、次から次へと空港から出ないで良いような理由が浮かんでくる。
今までパタゴニアのような場所にいたので気候的に正反対のバンコクでは外に出るのが嫌に
なるのも無理はないな、と自分で納得していた。
もう市内に行かないと決めたら直ぐに空港内のレストランに入った。懐かしのタイの飯を食いたかったが、あの辛いタイの飯ではなく、観光客用に味を調えた物だった。まあ空港っていうところはそんなものなのかな−と少々残念な気もし、おまけに値段もべらぼうに高かく、ここで払ったのは160B(バ−ツ)。街で食べると30Bもしないものだが、US$1が25Bなのでさすがに空港ではUS$1の飯は出せないのだろうと妙に一人で納得した。
空港内には日本人がやたらと目立つ。今までもそうだがなぜか日本人っていうのはどこに行っても草履を履く。もちろんここでいう日本人っていうのは貧乏旅行者のことだけど。そして半ズボン。一応空港というのはお金持ちの人たちが利用する場所でどこの空港に行ってもみんなそこそこの格好をしているが、日本人だけは違う。大抵旅をしているときのそのままの格好なので直ぐに目立ってしまう。まあ、それだけ日本人にとって飛行機という乗り物に対して特別な意識を持っていない証なんだと思うけど。
あと、ちょっとびっくりしたのはバンコクの空港のファ−ストフ−ドで注文を頼んでいると、直ぐ横のカウンタ−で同じように注文していた女の子たちがいたが、どうも言葉が通じなくて困っているようだったので、話しかけてみた。その女の子たちによると「注文の仕方が解らないんです。」と言うので、「欲しいセットの番号を言うだけですよ。英語も通じますし。」と言うと、「はい、そうなんですけど、その英語が分からないんです。」。ちょっとびっくりしたけど代わりに注文してあげることにした。「イクス・キュ−ズ・ミ。テゥ−・セッツ・オブ・ナンバ−シックス。プリ−ズ。」と言う
と、カウンタ−のお兄さんが「OK! Thank you!」と言いながら笑顔で答えてくれた。その日本人の女の子たちにもお礼を言われたが、いくら英語が話せなくても1〜10程度の数字くらいは勉強してきたら良いんじゃないかな−と感じた。聞けばタイに二人で2週間ほどいたそうで、よく無事に日本に帰れるな−と、ある意味感心してしまった。
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