<<南米−コロンビア>>

 ガテマラシティ−から[Bocota(ボコタ;コロンビアの首都)]まで、途中2回もの乗り継ぎでやっとのことで到着した。とにかく麻薬の取り締まりの厳しい国で、ヒッピ−的な格好では入国拒否の恐れがあるらしく、少しでも疑われないようにと、わざわざガテマラシティ−で新調したジ−パンのかいもあってか、入国に際しては全く問題もなく、もっといろいろなことを聞かれるのかと思っていたがちょっと拍子抜けな気がした。

 ターンテーブルから流れてきた自転車を受け取り、家財道具一式の詰まった鞄を付け終えた頃には辺りにはすでに人影もなく、妙に静かで、その静かさがまた今から始まる南米の旅をより一層に不安なものにしていた。

 ここ、ボコタには日本人がオ−ナ−の日本人の為のペンションがあり、初めての南米ということもあり、そこにお世話になることにしていた。ペンションの住所と電話番号の書かれた紙を持ってまず、観光案内所で場所を確かめたのだが、その案内所にいたおばちゃんがとても気さくな感じで、これこそが南米のノリなんだと、今までの緊張も一気に吹っ飛んでしまった。

 ペンションのオ−ナ−の佐々木さんにはコロンビア人の奥さんと4歳くらいの可愛い女の子がいて、その子がなかなかすごく、奥さんにはスペイン語で話し、佐々木さんには日本語で話すといった具合だ。

すでにペンションには何人かが滞在していて、日本語をしゃべれるのが嬉しかった。夜には『パルケス(公園)』という、すごろくゲ−ムで毎晩盛り上がり、気がつくと二週間も滞在してしまっていた。


 <<ボコタのセントロ(中心街)で>>

 初めて、ボコタのセントロに出た時は、かなり緊張していた。
やはり、そういうのは見た感じで分かるらしく、フラフラと散歩をしていると、すぐ目の前を歩いていた男が二つ折りにした札束を落とした。
「エッ!!!?」
そう思うと同時に横にいたまた別の男がそれを拾い、
「ヤッタ−! 俺たちはラッキ−だ。よし、山分けしに行こうぜ!」
と、いう内容のことをスペイン語で言っているらしく、とにかく、
「Vamos! Vamos!(行こう、行こう!)」
と、いうので訳も分からないままついて行った。
 
 大通りを歩きながらその男は自己紹介をし初め、次に、どこから来たんだ?、名前は?などと、話しかけてきた。
しばらく行くとまた別の男が現れ、その男もまた、
「Vamos! Vamos!(行こう!、行こう!)」と言ってきたので、このとき初めてこのままついて行くとヤバイと感じたので、「ノ−、ノ−」と言い、思いっきり走り、その場から逃げた。
 だいぶ走り、二人がついてきていないのを確認して、走るのをやめた。

 後で聞いた話しだが、そういう場合たいてい、お金を落とした男と拾った男はグルで、山分けするときに人気のないところに連れて行かれ身ぐるみ剥がされるらしい。もしくは山分けのときに「おつりを持ってないか?」と聞かれ財布を見せた瞬間に強盗に変身したり、偽札をつかまされたりと、ろくなことにはならない。

だいたいそんな大金を拾って、落とし主に言わずに、見ず知らずの人と山分けをするというのも、おかしな話しで、たいていは自分ひとりでネコババするはずだ。
コロンビア入国、二日目の出来事だった。

 <<ボコタの3つの顔>>

 ボコタの町を大きく分けると『ノルテ(北地区)』、『セントロ(中心街)』、『ス−ル(南地区)』の3地区に分けることができ、『ノルテ』は上流階級の人々が住み、比較的治安も良く、近代的なショッピングセンタ−や日本大使館もある。ここには日本人がオ−ナ−のカラオケパブがあり、一度ペンションにいた人達と一緒に行き、思いっきり熱唱して、盛り上がった。まさか南米にまで来てカラオケに行くとは思ってもいなかった・・・。

 コロンビアは世界三大美女生産地といわれるほど奇麗な人が多いと聞いていたが、確かに『ノルテ』には予想以上に多くの美女たちがいた。ただ、同じボコタの中でも『セントロ』やバスタ−ミナルなど、庶民の生活の場には、美女と呼ばれる人々はほとんどおらず、『ノルテ』や空港に限られているので裕福な階級にのみ、存在しているようだ。

 『セントロ』には人々も集まる所だけあって、多種多様の犯罪が多発する。実際、ボコタに来るちょっと前に月間殺害者数が世界的にトップになったらしく、町中には軍や警察のパトロ−ルが多く、そこら中でボディ−チェックを受ける人々の姿が目に入ってきた。

合図があったら壁に手をつき、後ろからボディ−チェックを受ける。初めてのときはもの珍しくて良かったが、日に何度もやられるとさすがに飽きた。でも、日本にいたらなかなか味わえない経験なので今となっては良い思い出になった。コロンビアという国がヤバイというのを思い知らされた経験だった。

 『ス−ル』には行ってないので噂になるが、治安はかなり悪いらしく、もうどうしようもないところらしい。


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