<<国境を越えるとそこには・・・>>


 ペル−に入国して何気なく自転車をこいでいると「あれっ!何かおかしい?何や?!」今まで道の両サイドにあったはずのバナナのジャングルが一変して、何もない荒野に変身してしまった。

 たった一本の目に見えない国境というラインを越えただけで、文化どころか植生まで変わってしまうのかと、かなり驚かされた。ほとんど気候も変わらない地域で本当に全く変わっているのが凄く、さすが世界一のバナナ国は荒野さえも農園に変えてしまっていたのだった。

 30qも走らない内にペル−側の国境の町Tumbes(トゥンベス)が見えてきて、今日はどこのホテルに泊まろうか?と、探していると、何人かの男が話しかけてきて、その内の一人が「いつ、ここを出るんだ?」とか、「自転車かバスか?」と、しつこく聞いてきた。妙にしつこかったので何なんだ?と思いながらも、「ここからバスでLima(リマ)まで行く」と言うと、
「何故?」
「泥棒や強盗が多いから」
「じゃあPiura(ピウラ)までは自転車で行け!!! 俺はタクシ−の運転手をしていて一日に何度も往復しているので、全く問題は無い!!!とにかくピウラまでは安全だ!」などと言ってきた。

 実はここに来るまでにいろいろな旅行者からペル−の北部のピウラ付近はかなり危険で、ほんのちょっと前に日本人のサイクリストが身ぐるみはがされ、自転車以外全ての荷物を取られた、という話を聞いていて、この区間は自転車では走らないでおこうと考えていた場所だった。
 他にも白人サイクリストもまた同様の事件に巻き込まれているし、日本人カップルもこの辺の観光地で丸裸にされて所持品を全て取られた、というのも聞いている。これが数年前に起こったことならあまり気にはならないのだが、全くタイムリ−な話でほんの2、3ヵ月前に起こったばかりのことだったので、この区間はとばそうと考えていたのだったが、彼らは何故かやたらと安全だと言ってくる。これは明らかに危ないとすぐに分かった。
 多分、今、目の前にいる奴らが数々の事件を起こしている輩か、そのうわさを聞いて集まってきて自分らもいくらかあやかろうとしている輩なんだろう。

 もし、強盗の情報を聞いていなかった ら、まんまと強盗の餌食になるところだった。つくづく自分の運の良さに感心した。

 とりあえず、すぐ近くに安いホテルがあると言うのでそのホテルの位置を確認してその場を去った。チェックインして、まず、シャワ−を浴び、腹ごしらえに出かけた。その後、バスのチケットを探し、チケットの都合でこの何もない田舎町で2泊もしなければならなかった。

 ちょっと、フラフラと歩き回ると狭い町だということを改めて知らされ、たまにはこんなところで休むのも良いかなあと考えながら、アイスクリ−ムをなめながら公園で時間をつぶし、エクアドルアンデス縦走の疲れを癒した・・・。


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